あこがれのカウンター




   店内に入ると私たちを最初に迎えるのは、年季の入った丸椅子が並ぶカウンター席です。 その佇まいに惹かれ、その丸椅子におもわず腰を下ろしたくなってしまいます。
 しかし、カウンターというものは容易くすわれるものではありません。大抵の人はカウンターを尻目に、テーブル席へと向かってしまいます。


「ここ数年でやっとここに座れるようになった」
 
 そう話すのは、もう30年もラドリオに通う女性。長い間テーブル席からカウンターを眺めていた彼女にとって、ある種カウンター席は神聖な場所だといいます。

「確固たる自分というものを持っている人だけが座れる席。
   私はこの歳になってやっとこの席に呼ばれた。」


 通い詰めてようやくカウンター席に座ったという常連さんは少なくありません。

 日が沈み、仕事終わりのサラリーマンがやってくるようになるとカウンターは途端に賑やかに。
夜のカウンターは交流の場として、常連さんが次々に座り、近況を報告したり仕事の愚痴等をこぼしあいます。
カウンターには人を惹き付ける特別ななにかがあります。


 もし、夜にラドリオを訪るなら、是非カウンター席に腰を下ろして隣の人と話してください。
私たち若者がいろいろな大人たちとはなせる貴重な時間になるに違いないでしょう。