昭和24年創業

 老舗喫茶が並ぶ神保町の中でも最も長い歴史を持つラドリオ。今年の10月には創業65周年を迎えました。

 かつて「島崎書院」という書店を経営していたオーナーが「書店に来る文化人たちが集まって討論できる場所を作ろう」と開業したのが始まり。
 それ以降、作家たちのサロンとして頻繁に使われるようになり、今でもラドリオは文豪たちが愛した名店として知られています。数多くの文学作品の中にも登場し、そうした本は店内の本棚にも置かれています。
 近年では「ユーミンが来店した店」として知られるなど、多方面の人々から支持され続けています。

 バブル期には地上げのターゲットになった神保町ですが、各店舗が団結して退けました。そのおかげで、風景は変わりながらも、ラドリオをはじめとした多くの老舗が残っています。
 変わってゆく東京の街並の中で守り続けられている文化が存在しているのです。

歴史を知る人たち


 「おい、ちゃんと区別してくれよ?隣の店とは歴史が違うんだから」路地を歩くご老人が、笑顔を見せつつ、そう言っていました。常連さんのなかでも特にラドリオに対する思い入れがあるのが、何十年も通い続ける年配の方々です。

 ラドリオ創業当時を知っていて、ともに人生を歩んできた彼らは、ほかの誰よりもラドリオを知っている人物と言えるでしょう。

 若い人が来店すると「生意気だ」と思うような手厳しい常連さんも中にはいるかもしれませんが、多くの常連さんたちが若い人との交流を楽しんでいます。


 人生の大先輩たちの貴重な話が聞けるのは、ラドリオのような場所だけです。

   

現在のラドリオ

 時代の流れとともに客層も変化し、最近では一人で訪れる女性客や、若いカップルなどもよく来店されるそうです。楽しく会話をする人や一人で落ち着いて読書をする人など、人それぞれ自由な時間を過ごしています。

 食事のメニューも豊富で、昼になるとラドリオ周辺の会社に勤める人たちがランチに訪れ、煙草を吸える昔ながらのラドリオはオアシスになっているといいます。
 夜にはバータイムになり、また違った雰囲気が漂い始めます。仕事終わりの人や近所の常連さんなどが「一日の終わり」として集まります。年齢も性別も関係なく、本当にいろいろな人が「昔から知っていたもの同士」のように会話を楽しんでいます。

 作家たちのサロンであったラドリオは現在、より多くの人たちの交流の場となっています。