歴史が生み出す空間




 入った瞬間に昭和にタイムスリップしてしまうような店内は、開業当時に流行っていたというハーフティンバー様式を思わせる作り。「ラドリオ」はスペイン語で「レンガ」を意味し、その名の通り外装から内装まで本物のレンガが敷き詰められています。
 地震や老朽化の影響で新しい柱が付け足されたり床のレンガが敷き詰め直されたりはしているものの、照明や置いてあるアンティークは同じものが使い続けられており、空間全体の雰囲気は守られています。

 それっぽく作っただけの店では醸し出すことのできない、65年間続く本物の空気がここにはあるのです。

今はなき表玄関




 通りに面した建物は、かつてはラドリオの一部でした。一部と言っても元々はそっちが表玄関の役割を果たし、今ラドリオを営業しているスペースはバーカウンターを主として使われていたのです。そのため、表の通りだけを見て「ラドリオはもうつぶれちゃったんだなあ」と、あきらめて帰ってしまう人が少なくないそうな。

 かつての表玄関は現在“ラド”という名で貸し画廊などとして使われており、当時の面影を残しています。二つの建物をつなぐ出入り口は今なお存在し、最近ではラドで活動する劇団が使用するなど、「生きた扉」です。

ゆるーい時間




 ラドリオのすぐそばには大きな通りが通っていて、たくさんの人や車が行き交います。そうした喧騒を抜けてラドリオのある路地に入っていくと、それまでの雑然とした空気が嘘のように、静かでゆっくりとした時間が漂っていることに驚くはずです。
 いつ行ってもラドリオの店内にはゆるーい時間が流れていて、ついつい長居してしまいます。なかには何時間も眠っているお客さんがいるほどです。

 コーヒーショップやカフェのように開けた空間ではなく、包み込まれるような空間のラドリオ特有の過ごし方ではないでしょうか。