街灯とは


街灯は街をつくる。生活の中で、あるのが当たり前になった街灯という存在に対して、私たちはあまり知らない。 例えば、街灯は光るものというものは漠然と頭の中にあれど、しっかりとどういったかたちを持つものであったか思い出すことはないように。 しかし街灯と一口でいっても、設置者、用途、目的、電球等の種類で外観・役割が大きく異なる。 街灯のデザインは街づくりに大きく作用している。

グランドデザイン


現在中野区ではグランドデザインという取り組みが行われている。グランドデザインとは、ここでは単純に「どんな街を目指すかという目標に向かっての環境整備デザイン」の意味で扱う。 『中野駅周辺は、区全体を「持続可能な活力あるまち」へとけん引する役割を担っています。 まちづくりにあたっては、これからの社会経済動向を踏まえ、 グローバルな視点を持ちつつ、 先導的なまちづくりを進めていく必要があります。 グランドデザインに基づいて、中野駅周辺のまちづくりを広くアピールし、中野の存在感や注目度をさらに高め、より良いまちづくりの循環を生み出 していきます。』(中野のグランドデザインver3から引用)
以上のように、中野ではこのグランドデザインに力を入れている。その最もな例のひとつとして、街灯があるのだ。

街灯が多い理由


区のなかでもトップの街灯数である。確かに中野駅を出て10分ほど歩いただけで、「やたらと街灯がある」ということにすぐ気づく。 街灯が多い理由は、中野区の人口の特徴にある。戦前から住宅地として発展し、高度経済成長期に伴って東京に移り住んだ人々が集まった場所である。 今も住居として利用されてる地域が全体の7割を越え、そのため夜間人口が多いので街灯数は必然的に多くなる。 しかし、単純に街灯数が多いというだけではない。この図鑑にまとめられているように、数だけではなく街灯の「種類」もとにかく豊富であるということに注目することができる。

街灯のかたち


街灯のかたちの種類も豊富である理由は、中野区の商店街数も関係している。 中野の商店街は、多くは神社や寺や駅の集客に合わせ、参道や駅前の店舗が蓄積したものか宿場に店舗が蓄積したものである。 最初の商店街は中野サンモール(旧:中野美観商店街)で、現在区内に90もの商店街があり、中野区の12の駅前にはすべて商店街が存在する。 しかし近年、中野区商店街連合会に加盟している商店街は61カ所と減少している。とはいえ、商店街同士が近隣に密集している。 そのため商店街ごとに独自の街灯のスタイルを入れることで、目で見て商店街の場所がわかるのと、どこまで商店街が続いているのかというのが判る。商店街に合わせた街灯づくりがなされているのだ。

薬師あいロード


なぜこのような取り組みを行うのかということを「薬師あいロード」を例に挙げてみよう。


薬師あいロードとは、 戦前から新井薬師の門前町の商店街として栄えていた。(旧:薬師銀座商店街) 徳川将軍の目を癒したといわれる薬師梅照院の新井天神が薬師銀座通りを超えた先にあり、そこへ人々がお参り帰りに寄る商店街として大変な賑わいがあった。 現在のあいロードは薬師梅照院が目にご利益のあるお寺ということから、目の「eye」と、地元民から愛されるという「愛」の意味をかけて平成元年に改名されたものである。



右の街灯は、1970年代のものである。 高度成長期のなかで、人類初の月面着陸が行われ、ちょうど大阪万博があったように、1970年代は「人類の進歩と調和」をテーマにしていた。 旧薬師銀座商店街の当時の街灯も、宇宙の・最先端の・近代的なの三つをイメージして生まれた。



中野区ではグランドデザインの一環として商店街を含めた区内の街灯すべてを2014年にLED化させた。 詳しくは下のバナーからLED街灯のススメをチェック。



  


そのことを踏まえて、薬師あいロードでは以下のことを述べている。 『現在、若者たちは中野駅に降りてもブロードウェイまでしか足を運ばない状況に陥っている。 そのことについて懸念した新井薬師新興会は都市計画を立ち上げた。 少しでも多くの若者が薬師あいロードに足を運んでくれるように、街灯を白熱電球からLEDに変える時にデザインも変えるなどの取り組みを現在まで行ってきた』(中野のグランドデザインver3から引用) いま商店街側は、1970年代の近代的な姿としてではなく、あいロードを新井薬師の参道として使って欲しいと思っている。 2014年7月にデザインを一新したあいロードの街灯は、参道のイメージにふさわしいかたちへと生まれ変わった。 街灯のかたちは、商店街のイメージを作り出すことに深く密接しており、街の外観をつくる存在なのだ。

『街灯がつくる街づくり』


暗い夜道をあかるく照らす役割というのが街灯の存在意義である。そのおかげで夜も明るいなか一人で歩いていけるため防犯の意義もある。 だが、それだけではない。街灯はひとつひとつは小さな光でも、連なった姿は街をデザインするひかりになる。確実にそこにあり続け、街灯自体のかたちで、あかりの強さで、街の外観を大きく作り上げ存在なのである。


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              写真 なかの写真資料館様  ※許可を頂いた上で写真をお借りしています
 
              引用 中野区公式ホームページ様  


 
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2014 中野のあかり調査隊